役割等級制度の現状と本質 [7/11]

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成果主義とは“個”を活かすこと

BG: 先生のお考えになる成果主義とは,どのようなものなのでしょうか?

西村: 成果主義に対する批判の中ではあまり触れられていないことでひとつ気になっているのは,成果主義の導入によって中高年者,あるいは身体障害者などへの冷遇が正当化されてしまうことです。結果を出す力を本来的に持てない人たちに対して不平等じゃないかということが出てくるだろうと。これについてはやはり気をつけて運用しなければいけないでしょう。政府による社会システムの整備はもちろんですけれども,企業側においても,やはり定年延長,キャリア形成支援,社内公募制度であるとか,アウトプレースメント・サービスなどの充実を図って,従業員を縛らない人事システムを構築していかなければならないと思います。

 これを私は,中世ヨーロッパで個々を抑圧して自閉社会になっていた文化を崩し,個を解き放したルネサンスのように,日本が今,個の活性化,活力を生むという意味で「人事ルネサンス」の時期を迎えていると思っています。年功序列に戻れということではなくて,過去の良いところがあれば再発見し,個の再生・復活,これを活かすための社会システムと企業システムを作るということが必要ではないでしょうか。

 成果主義っていうのは結果が重要ではありますが,やはり「個を活かす」という思想が最も大切なことなのです。

 私自身は「年功序列が悪い」とは思っていません。維持できるのであれば維持したらいいと思います。年功序列を維持するために,今の利益を出し続ける努力をすればいいわけですし,維持のさせ方として,賃金ベースそのものを下げて年功序列にする手だってあります。ただ,それがこのグローバルな競争において,垣根がなくなった世界において通用するのかといったら,絶対通用しないですよね。人の考え方も,時代背景・経営環境に基づき変化する。これからも続くであろう低成長,成熟社会においては,多くの企業において成果が出たかどうかによる評価と,これによる格差をつけることが求められてくるはずです。したがって,成果主義人事制度を導入する企業が増えてくることになるでしょう。その中で主流になってくるのが,役割等級制度導入の背景のところでも申し上げたように,経営革新のためにはお客様起点によるビジネスプロセス改革,それに基づく人事制度構築しかあり得ない。それが私が言うところの「役割等級制度」だということになります。

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講師紹介

孫田 良平 氏

NPO法人 企業年金・賃金研究センター 名誉顧問

講師紹介

(株)メディン
 代表経営コンサルタント
  西村 聡 氏 

NPO法人 企業年金・賃金研究センター 上席講師

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