役割等級制度の現状と本質 [11/11]

10より続く

役割等級制度を導入する際のポイント

BG: 今までのお話を伺っていると,結局人事制度を触るまでもなく結果が出てしまうというところが役割等級制度導入のすべてのような気がしますね。

西村: そういうことです。人事専門のコンサルタントにしてもそうなんですが,組織なら組織構造のみ,人事制度なら人事制度設計のみを変えようとするわけです。「その狙いは何なのか」という話になると,やはり目的はひとつ,企業の活性化なんですよ。ひいては企業に利益をもたらしたいという話に行き着きます。では,人事制度を触れば利益は上がるのかといったら決してそうではなくて,その逆の場合が多い。人事制度を触ることによって組織風土まで変わってしまうという,非常に重大な部分ですので,やはり利益を出すための仕組みをまず考えましょうよ,仕事のやり方を考えましょうということです。「それができないと言うのなら,人事制度に手つけるぞ」でもいいんです。ビジネスプロセスの改革と,動機付けアプローチ,これらを必ずやらないといけないと私は考えています。こういったものは経営者の意思ひとつです。しかし,人事制度を触れば会社は良くなると思ってる人が結構多い。そしてまた「それは人事制度が悪いんですよ」「人事制度を変えたら活性化しますよ」というコンサルタントも多いようですが,そんなことは決してありません。「定昇もベアもあります」という時代ならまだしも,そんなに給料を払える時代ではありませんから,それよりも,どうすれば企業が活性化するのかを考えるべきです。

新しい人事制度を導入するときに大切なのは,まず経営者の想いですね。会社がどうありたいかということを考えてからでないと,人事制度の構築は非常に難しいでしょう。たとえ制度は導入できたとしても,運用が非常に難しくなるということになります。画一的な能力が求められた時代から,プロフェッショナルを指向する時代になっていく中では,やはりこれは当然のことになってくるでしょう。職務を安定的に捉えられないことを理由に職務等級制度を初めから否定するのは,物事を曖昧に終わらせるということになるので避けるべきです。ただ,実際に役割(職務)記述書の内容のみでの運用は難しいので,プロセスを加味することが絶対に必要です。なぜなら,経営環境は常に変化していますし,今後組織がますますフラット化し,自律的な組織やチーム編成によって目標を達成することになってくるからです。また,経営環境の変化に応じて各職務の具体的目標が変わることになってくるため,達成すべき目標と結果を示され,能動的に行動することが重視されることになってくるということから,役割等級制度というものが重要視されているわけです。先ほど「人事ルネサンス」と申し上げたように,キーワードは“個の活性化”です。これは,賃金をいくら上げたいかとか,もらいたいかということではなくて,要は個人を自立させてあげようということです。今まで社員を企業が縛ってきて,キャリアまで会社主導で築かせておきながら突然「君の仕事はうちにはないよ,もう役に立たないよ」といってリストラする,そんな無責任なことをこれからも日本企業はやるのでしょうか。これからはそういう時代ではありません。会社が活性化するためにビジネスプロセスを改革し,必要な機能は何で,それを実現できる人は誰なのかということを考えてあげたときに,人は活性化する。そういう想いが必要です。私は役割等級制度の導入方法そのものが,組織活性化のために使えるだろうと思います。


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講師紹介

孫田 良平 氏

NPO法人 企業年金・賃金研究センター 名誉顧問

講師紹介

(株)メディン
 代表経営コンサルタント
  西村 聡 氏 

NPO法人 企業年金・賃金研究センター 上席講師

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